今、お寺がアツイ?!お寺をもっと身近に感じる楽しみかた

FEATUREAugust.06.2019

皆さんは、“お寺”と聞くとどんなイメージを思い描くだろうか?「お墓参りに年に2、3回行く場所」、「お葬式や法事の時、セレモニーホールにやって来るお坊さんがいるところ」など、お寺が実際どんな場所で、何をしているのか分からないと思う人は少なくないだろう。仏教は、我が国においてとても古い歴史を持つ。かつてお寺のご住職は、その仏教の教えを伝えながら地域に根付き、地域に住まう人々は、心のよりどころとしてお寺を日常的に利用してきた。しかし、時代の流れとともに生じてしまった人々の暮らしとお寺との距離。今回は、そんな近年衰退してきたと言われるお寺の存在を覆すようなアツイ活動を続けているご住職と副ご住職3人の元を訪ねて、お寺を身近に感じられるお話を聞いてきた。


一乗寺の永井義岳ご住職を訪ねて

山梨県南都留郡西桂町。富士山を目の前に眺められる昔ながらの集落に「一乗寺」はある。今回お話を聞いた1人目のご住職は、この地域にて400年以上続くという歴史あるお寺に生まれ育った22世現ご住職の永井義岳さんだ。
教区でも要職を務め、檀家の皆さんにも親しまれた20世ご住職のお祖父さまと、病気がちで入退院を繰り返していた先代ご住職のお父さまの背中を見て育った永井さんは、なんとなくではあるものの自身がこのお寺を継ぐのだろうと感じずにはいられなかったと物心ついた頃のことを話し始めた。

▲西桂町にある一乗寺

▲歴史を感じる本堂

▲取材に応じてくれた現ご住職永井義岳さん

「それでも若い時は、お寺には入らない!なんて反抗していましたよ。順番的には、私なんだろうなとは感じつつも」
お祖父さまは小学3年生で亡くなり、多感な時期に家庭は不安定。頼りにしていた親戚のご住職も永井さんが大学生時代に他界したそう。そんなこともあり、自身は臨済宗の僧侶となる為に修行へ出た。修行から帰って1年後、病気を患っていた父である先代ご住職も他界。お寺のお勤めと地元織物組合にて事務員として働く日々を送ったという。11年間勤めていた平成22年、お寺を支えていたお母さまが他界した。その後すぐの平成23年3月11日に、あの東日本大震災も起こってしまったのだ。まさに、この二つの出来事が、永井さんの暮らしを大きく変えたと話す。

「何かやらなきゃ」そう思った

お母さまが他界したことを機に、組合を退職し、改めて仏教とは何か?本来のお寺の在り方とは何か?と考えさせられることが多かったそうだ。

「何かやらなければ始まらないと思ったのです。ないものを新しく作るのではなく、あるものでやれることはないか?と思ったのが後の活動に繋がっているのかもしれません」

永井さんの所属する、臨済宗妙心寺派山梨教区青年僧の会「不易の会」では、東日本大震災後、復興支援プロジェクト「わらべ地蔵を被災地へプロジェクト」の活動をスタートし多くの人々がこれに参加した。その他、カフェなどで気軽に法話と禅の体験ができる「寺‘s Café」や大規模災害時に義援金募金活動や被災地ボランティア活動などに参加するなど、その活動は広く周知されていて現在、永井さんは不易の会の会長も務める。近年では、お寺にて婚活をする「紅絲会」も発足し、自身のお寺のみならず様々な視点から仏教の布教活動を始めているのだ。

「晩婚化や少子化などが世間で報道されていますが、田舎であるこの辺りの人口減少は、当然のことながら深刻な問題です。お寺という大きなハコを使って地域と人を繋げることこそ、かつてのお寺の在り方なのだと感じ、“お寺で縁活”という名で婚活イベントにも挑戦をはじめ、現在26回目を終えたところです。とても1人ではここまで続けることは出来ませんでした。運営メンバーの協力があったからこそ。宗派の連携で関東圏からも多くの参加をいただいています。都会の生活から離れたお寺で過ごすゆるりとした時間が参加者の皆さまにご好評いただけているようです」
と永井さん。

▲婚活イベントにて、草木染めをしたときの様子

▲女性が楽しめる企画を考えることが多いそう

面白い活動から見えること

一乗寺のある西桂地域は、富士山や富士急ハイランドなどの観光スポットがある場所へ行く為の通過点として考える人も少なくなく、新しい人が訪れる機会をつくる必要があると永井さんは語る。
「何もないわけではないんです。ハタ織りの町であることや、富士山の眺めも本当に素晴らしい。お寺としてできることは、地域を繋げ、人を繋げていくこと。チームでの活動はもちろんのこと、一乗寺としての年間行事の見直しや地域との連携など、これからも地道な活動はまだまだ続くと思います」
と笑う。

▲一乗寺で行っているワークショップ。ネクタイ生地で作るお守り。予約すればどなたでもつくることができる(1人1,000円・税込)

▲お守りの中には、参加者が写経したものを入れてくれる

多くを求めることなく、まずは自身が楽しむ気持ちを忘れない永井さん。その、自然体の笑顔がきっと人々を惹きつけているに違いない。歴史ある一乗寺のご住職である永井さんは、仏教に、そしてお寺に、気軽に触れる仕掛けを沢山用意して今日も布教活動を続けている。

▲境内からは、富士山が見える日もある

▲永井さんの活動はこれからも続く

一乗寺

住所:山梨県南都留郡西桂町小沼1997
電話番号:0555-25-2031

「ネクタイ生地で作る写経お守りつくり」の体験をプレゼント
※完全予約制。※1回限り。

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ご予約の際は入居者カードを使用する旨をお伝え頂き、店頭にてご提示ください。
(カードのご提示が確認できない場合は、サービスをご利用頂けません。)

西源寺の若月和道ご住職を訪ねて

次に向かったのは、山梨県山梨市の標高約750mの美しい里山に位置する「西源寺」ご住職、若月和道さんのもと。
「ここまで登ってくると温度が違うでしょう」
笑顔でお出迎えしてくれたご住職は、さぁさぁと本堂の中へ私たちを案内してくれた。築250年とされる大きな本堂は、少しずつ修繕を加えながらも細かな所に当時の職人の手仕事が感じられる趣ある心安らぐ空間。

▲西源寺のご住職、若月和道さん

▲階段を上らなくても本堂に行けるが、階段を歩くのも気持ちが良い

「父は都内にて教員をしていました。このお寺の住職をしていたのは、私の祖父。そんなこともあり、私にとってはこの場所が第二の故郷でした。祖父が高齢になったこともあり、19歳の時に曹洞宗の僧侶になる為、2年間修行に出ました」
禅宗の一つと言われる曹洞宗の修行は、文字通りそう甘くはない。厳しい修行を終えた若月さんはその後、西源寺でのお勤めを続けながら、先の永井ご住職と同じく、地元で就職し働くことを決意した。同市にある市役所にて勤務したことで、地域のネットワークや課題点などに常に向き合え、その過程が現在の自身の資本になっていると語ってくれた。

▲歴史ある立派な本堂

▲本堂の中もとても美しい

▲御本尊の裏側には、立派な位牌堂がある

社会問題から紐解く様々な活動

若月さんは、日々忙しく走り回っているがその中でも活動の目的をしっかりと決めている。それは、“子どもの時にお寺で過ごした記憶を残す”ことだ。その為に今できることを進めていると言う。
建物なき寺院「SOCIAL TEMPLE」に所属し、今ある社会の課題に向き合うこともその一つ。例えば、僧侶と学生、子どもとその親がお寺に集まり同じ食事や時間を共有する「寺GO飯」や行政書士から学ぶ相続勉強会などと法話の時間を設けた「ゆくすえ茶話会」など、その動きは自身のお寺での枠を超えている。

▲SOCIAL TEMPLEの主要メンバーにもなっている

近い所では、在宅ワークを中心にした仕事を提供するLINKwith&coとのコラボ企画「寺co-working」も話題だ。子育てや介護、家事と仕事のバランスを保ちながら働くことを可能にしたLINKwith&coの運営メンバーとして、県内協力寺を設け、働く会員たちに定期的に場所を提供している。
「子どもがお寺の境内や本堂を走り回る風景が好きなんです。私自身もかつてそう過ごしてきた。仏教やお寺は、それくらい地域に根付き日々の暮らしの中に当たり前に存在しているものだと思うのです」
と若月さんは活動を続ける意味を語ってくれた。

▲「寺co-working」の様子

▲若月さんは、子どもたちにお寺で過ごした記憶を残していきたい

お寺が地域のコミュニティになってほしい

自身のお寺では、長年続く年間行事を大切に紡ぎながら、地域の親子を集めたキャンプやお祭り、無料の座禅会などを続けている。
「お寺や仏教を身近に感じてもらえたら嬉しいです。お寺が地域のコミュニティになれることが大切ですよね」

そう話す通り、取材中も近所の方が訪れたり、帰り際にはこの地域にある若月さんおすすめの手土産を持たせてくれたりと、この場所にはまだまだ昔ながらの暮らし方が息づく時間が存在しているようだ。

▲誰とでも気さくに話してくれる若月さん

西源寺

住所:山梨県山梨市牧丘町西保中1780
電話番号:0553-35-2131

入居者カードご提示で、「教えて!若月さん」1回限りの特別無料人生相談。
※完全予約制。※30〜60分。

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能成寺の樋口雄文副住職を訪ねて

そして、今回のお寺巡りの最後に訪れたのが、甲府五山の一つである「能成寺」。2016年に修行から戻った副住職の樋口雄文さんからお話を伺ってきた。

▲能成寺の本堂

貞和年間(1345-1350)に、信玄公の父・信虎の曽祖父・信守公によって、八代町北に開山した能成寺。信玄の時代に甲府城下(現在の甲府市宝)へ移された後、武田家滅亡を経て、文禄年間(1592年 – 1595年)に、今の甲府市東光寺町へ移されたと伝えられている。境内には、武田信守供養塔もあるとても格式の高いお寺で、甲府五山のひとつとしてその名を広く知られている場所でもある。樋口さんは、美術系の大学を卒業後、臨済宗の僧侶になるため修行へ。厳しい修行の中で心の支えとなる教えに出会ったことを話してくれた。

▲武田信守供養塔

▲自然石を積み上げた「穴太(あのう)積み」といわれる石垣

「“あれを見よ 深山(みやま)の桜咲きにけり まごころつくせ 人知らずとも”修行に行き詰まっていた時に修行道場の師匠が教えてくださった短歌です。深い山の中に咲く山桜は、誰の目にも触れられないかもしれないけれど、ひっそりと、でもしっかりと自分の命を全うしている。人が見ていようがいなかろうが、真心を尽くしなさい。という意味を持つこの短歌は、今でも私に力を与えてくれています」
と壁にぶつかっていた修行当時を振り返る樋口さん。

▲穏やかな口調で周りを和ませる副住職の樋口雄文さん

修行を終え能成寺に戻って少しした頃、先に訪れた南都留郡西桂町の一乗寺永井ご住職と同所属である、臨済宗妙心寺派山梨教区青年僧が立ち上げた「不易の会」から、新たに発足された「寺’s Café」のメンバーにと誘いを受けたという。

寺’s Caféの活動

お寺や禅の文化を身近に感じてもらいたいという想いから、若手僧侶が中心となり発足された「寺’s Café」。カフェやお寺にて、座禅体験の後、短い法話を交えながら食事やお茶の時間を設け、誰もが気軽にお坊さんと話し、楽しく過ごせるという企画を定期的に行っていく活動だ。樋口さんは以前より、寺離れ・仏教離れと言われているが、仏教から人々が離れたのではなく、僧侶の側が人々から離れてしまったという厳しい意見もあると話す。

▲五味醤油の味噌づくりワークショップを開催

▲坐禅のほかにも写経ができるそう

「お釈迦様は、一生を旅して仏教の教えを説いて行ったのです。私たち僧侶も待っているだけではなく、積極的に町へ出て仏教や禅を伝えていくことも大切な務めとなっています」
と樋口さん。
 「仏教」と「禅」という素晴らしい教えを伝えていくことで、お寺や僧侶との距離を縮められるはずという想いで樋口さんらは日々発信を続けている。

▲西日本豪雨被災地、愛媛でのボランティア活動

▲甲府駅前での募金活動

お寺をみんなでシェアできる場に

樋口さんは、能成寺独自の活動にも極めて積極的だ。「篠笛の演奏会」や「古武術勉強会」など、本堂を開放し様々な人にコミュニティの場を提供している。
最近では、海外アーティストの活動を支援する甲府市の「AIRY(エアリー)」と共に、各地の伝統芸能と共演を続ける「坪内あつし(パーカッショニスト)さん」、「菜央(ダンサー)さん」夫婦による『旅する芸能〜坪内一家のトーク&ライブ ミャンマー編』も開催された。

▲2019年7月4日に開催した「能成寺~旅する芸能~坪内一家のトーク&ライブ ミャンマー編」

「それぞれ得意な分野、資格を持っている方が、個々の力を集約して、お寺を気軽に使ってもらうようなことをやっていきたいです。お寺という場所をシェアしてもらいたいです」と樋口さんは今後の願望を熱く語ってくれた。

そして最後にどんな想いを大切にしていますか?と問うと…

「あれを見よ 深山(みやま)の桜咲きにけり まごころつくせ 人知らずとも」

やはりこの短歌が返ってきた。

▲まだ若い樋口さんの活動に期待が高まります

能成寺

住所:山梨県甲府市東光寺町2153
電話番号:055-233-9396

人気の座禅体験
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文章:堀内麻実(anlib design)
写真:anlib design

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